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Exhibition Archives 2020

吉田 花子 企画展

2020年1月7日(火)-1月18日(土)12日(日)休廊

Situation
acrylic, mixed media, oil on panel 162 x 162cm 2019
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吉田花子の世界         千足伸行 (成城大学大学名誉教授 広島県立県立美術館長)

 30歳をようやく過ぎたばかりの吉田花子の画家としての経歴は当然のことながらまだ浅い。
しかも実質的に独学である。ただし、芸術家肌の父上と、デザイナーの母上ということで、
家庭が吉田花子の最初のアトリエであったとも言えよう。それもあってか、20歳を過ぎた頃から
早くもグループ展に参加し、2014年からは銀座のギャラリーQを拠点に個展も積極に開催し、ごく
最近ではオープンしたばかりのトリー バーチ銀座店に縦が2メートルを超える掛軸状の大型の作品
を展示するなど、若手としては最も注目されている画家のひとりと言っても過言ではない。

 吉田花子の画歴で注目されるのは、初めから抽象画家として出発していることである。カンディ
ンスキーもモンドリアンも、その他の抽象画家も総じて具象から抽象へ、が一般的なパターンであ
った。 おそらく今も変らないが、吉田花子がいきなり抽象の世界に飛び込んだのは具象には必須
の基礎的、基本的な部分を飛ばしてというより、吉田花子には生来的に抽象思考がしみ込んでいた
からと見るべきだろう。

 吉田花子のもうひとつのこだわりは、インテリア=空間に溶け込むアートである。暮らしの中の
アート、言えるが、ホテルやオフィス、ショップなどに溶け込むアート自体はすでにどこにでもあり、
これ自体は新しいとは言えない.彼女の意識の中にあるのは「アート」として「聖化」、「聖別」
されない万人に開かれたアートであろう。こうした思想、理念自体は19世紀後半のウイリアム・
モリス、(今年が生誕200年の)ジョン・ラスキンなどによる「民衆の芸術」運動に遡るが、芸術、
のあり方ではなく、《DEJAVU》シリーズその他、ここ数年間の吉田花子の作品について見ると
独学がむしろ幸いしてか、過去の抽象にとらわれない自由闊達なフォルムと色彩のせめぎ合いから、
画面には快い緊張感、エネルギーが充満しているように見える。

 トリー バーチ銀座店に展示した2点の作品について、作者自身は次のように述べている。
「女性として生きるうえで、個人個人がかかえている悩みや不安などから全て解放され、希望が生
まれる様子、女性の可能性を表現しています」。「ダイナミックな色彩構成と表現で、女性の持つ
寛大さ、情熱、愛情など、女性が秘めている壮大な力強さを表現した作品です」。

 これらの作品と向き合った時、そこに作者がここで表明しているような女性特有の「悩み」や
「不安」、あるいは「寛大さ、情熱、愛情」を感じとるかどうかは保証の限りでない。作者の言
葉はそれなりに尊重される権利はあるが、しかしひとたび作者の手を離れた作品は、親元を離れ
た子のように独立し、いわばPublic Domain入りする。以後、作品を前にして何を感じ、読み取る
かは個人にまかされる。つまり、作者の思いが伝わらない可能性は十分ある。これは抽象芸術の
宿命のようなものであるが、「何を」描いたかにとらわれることなく、作品との自由な対話を楽し
むという意味では抽象芸術がむしろ優っているとも言えよう。

吉田花子が作品にこと寄せたメッセージ、意味が人々にそのまま伝わらないとしても、作品の価
値がいささかもゆらぐものでないことは言うまでもない。最近の吉田さんは画材として和紙や古
い布などを使い、大きな掛け軸のように仕上げるなど、日本の伝統を意識した野心的な作品も試
みている。まだ若いだけに今後の展開は予想しがたいが、自分に語りかける現実、自然との接点
を失う事なく、フレッシュな感性でさらなるヨシダ・ワールドを展開してくれることを期待して
やまない。





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アプリオリの美学                  五十嵐 卓 (美術評論家)

 

 人間の才能にもいろいろある。アポステリオリ(後天的)に努力と経験から築く知識と技術。
アプリオリ(先天的)に生まれながら所持する感性(センス)や品格など。 吉田は、美術家の父親、
インテリアデザイナーの母親のもとに育ったことで、絵描きとしての素養はアプリオリに備わってい
たのではないだろうか。

 吉田の作品は、周りの環境と自然に溶け込み、大らかな空気に包まれているように見る者に歓びと
安らぎを与えてくれる。それらには、作家の「気負い」や「作為」というものはあまり感じられずナ
チュ ラルな印象を受けるのだ。吉田は、自分の作品を「心象風景」でなく、「心情風景」だという。
「心象=意識に浮かんだ姿」ではなく、 「心情=心の中の思い」を描いているようだ。 ある場所や
時間、人との出会いや記憶から抽象的イメージが生まれる。そのイメージを様々な素材と技法で、画
面に素直に再現しているのである。

 大学在学中からこれまでの約10年間、吉田はいくつかのシリーズを制作してきた。2010-13年が
「Secret Garden」(自分にしか見えない抽象イメージの記録)、2014-16年が「Face」(人間関係を
描いた作品)、2015-2017年が「afterimage」(場所に残っていた気配、残像)、2016-19年が「DEJAVU」
(記憶)である。 当初は作品にバイオモルフィック(生命形態的)フォルムがあったが、次第に直線的、
幾何学的フォルムも入り組んでくる。画面を何層にも塗っては削る複雑なレイヤーの擦れの感興が魅力的
である。時折、迸るドリッピングや潔い線描が画面に緊張感を与えている。フラットなフォルムがコラー
ジュのように見えることもある。コンポジション(構図)は自由奔放ではあるが、絶妙なバランス感覚
の着彩によって品位ある調和が保たれている。

 吉田は本展から「Situation」(場)という新シリーズを発表する。元号が変わり、吉田自身の環境
も変化する節目だという。「Living with Art」をテーマに日常の暮らしを豊かにする作品を制作する
ことには変わりはないが、「心情風景」の変化は感じられるであろう。


Artist Profile
1988 東京都生まれ
2012 成城大学文芸学部芸術学科卒業
個展
2011 「Secret Garden 」国分寺 東京
「Secret Garden 2th」 神楽坂 CANALCAFE boutique、東京
2012 「Secret Garden 3th」国分寺 東京
「Secret Garden 4th」青山 doux dimanche、東京
「Secret Garden 5th」南青山POLIS 東京
2013 「Secret Garden 6th」南青山POLIS 東京
「Secret Garden 7th」西武渋谷 B館リビングエディション
2014 ギャラリーQ、東京
2015 「afterimage」ギャラリーQ、東京
2016 「light+building」国際照明見本市、フランクフルト
ギャラリーQ、東京
2017 「DESIGNART」 ape´ro WINEBAR、東京
ギャラリーQ、東京
2018 「DESIGNART-Living with Art 」SieMatic、東京
ギャラリーQ、東京
2019 「DESIGNART TOKYO “Woman”」 TORY BURCH、東京
2020 ギャラリーQ、東京
グループ展
2013 「BankART Artist in Residence OPEN STUDIO 2013」BankART Studio NY、横浜
2014 「第7回三井不動産商業マネジメント・オフィース・アート・エクスビション」
三井不動産商業マネジメント株式会社、東京
2015 「99人展」ギャラリーQ、東京
「Heartwarming展 2015」ギャラリーQ、東京
2017 第7回「Next Art展」(主催:朝日新聞厚生文化事業団)
朝日新聞東京本社本館2階コンコース、松屋銀座8階イベントスクエア、東京
「Small Art Works展 」ギャラリーQ、東京
2018 「シェル美術賞2018」国立新美術館、東京
受賞歴
2017 第7回「Next Art展」(朝日新聞厚生文化事業団主催)
「DESIGNART2017」
「DESIGNART2018」
2018 「シェル美術賞2018」入選 国立新美術館
コレクション
2010 CANAL CAFE
2013 POLIS
2014 「オーベル目黒」大成建設
2015 LE STANZE
2016 「TRI-R ドイツ フランクフルト / MAJES元麻布 東急ホームズ,株式会社アマナ 多数
2018 オークウッドレジデンス品川、東京
ワークショップ
2011 CANAL CAFE boutique Opening LIVE paint (作品展示中)
2015 「超ショートショート講座 抽象画を描こう」世田谷文学館
2017 「自画像を抽象的に描いてみよう」世田谷区桜ヶ丘区民センター 
「誰でも絵かき」世田谷文学館