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Exhibition Archives 2022

吉澤 舞子展

2022年1月15日(土)- 1月29日(土) 日曜日 休廊 

works
 
Artclitic by Iwata Yuzuko


吉澤舞子の新しい地図 

岩田ゆず子

大画面の中で人間の手足をモチーフに据え、観客を圧倒する作品を創
り上げてきた吉澤舞子。2022年の幕開けとともに発表した新作《アト
ラスを開く》(2022年)は、常に「祈り」を胸に抱く作家がコロナ禍
に喘ぐ今を見つめ、そこから生まれた新境地を壁面に浮かび上がらせ
ている。

世界に蔓延し、人々を混乱へと陥らせた新型コロナウイルスの流行は、
吉澤の仕事・心境に大きな影響を及ぼした。決まっていたアメリカ・
マイアミでの在外研修は延期、本来は春の訪れとともにトランクへ画
材を詰め込み出発するはずだった吉澤は、ひとり床に岩絵具を広げ淡
々と画面へと向かうことになった。世の中の人々が、初めて発出され
た緊急事態宣言に戸惑う中、吉澤は作品を見る人々を大きな手に優し
く包むかのような8メートルに及ぶ大作《乱反射の器》(2020年)を
発表。今作は翌年のグループ展出展時に加筆され、長期にわたり大き
な画面へと徹底的に向き合う現段階での吉澤の集大成となっている。

翌年の2021年、インターネットで吉澤の作品を見た世界に流行してい
るトレーディング・カード「マジック:ザ・ギャザリング」の関係者よ
り、作家宛にカードの原画制作の依頼が舞い込む。CGによる制作が
増加する中、和紙にアクリル絵の具で描いた原画は人々の目に新鮮に
映り、吉澤の元には1点物の絵を求める問合せが殺到する。これまで
の吉澤の画業から、本人も予想していなかった「マジック:ザ・ギャザ
リング」との出会いは、新作《アトラスを開く》に着手する重要な端
緒となったと言っても過言ではないだろう。

筆者は吉澤にこの仕事について尋ね、応答を得た瞬間に、これまでの
吉澤の大画面の仕事が自ら描いた手によって生身の観客の全身を包み
込む形態だったとしたら、今度は観客の手が吉澤の作品のパーツを分
けてそれぞれに抱くことができるという新しい形態へと向かうきっか
けになったのだと確信した。

前述の大作《乱反射の器》を展示し終え、次に「マジック:ザ・ギャ
ザリング」により新しい手応えを感じた吉澤は、すぐさま新作の構想
に取り掛かる。その中で、日本美術史家のタイモン・スクリーチ著
『江戸の身体を開く』に出会い、スクリーチが解説する17世紀中国の
拓本「無極内経図」(胸中山中図)に目を奪われる。この図から、人
間の身体を地図として記す先人の表現を鍵とし、ロールプレイングゲ
ームを操作する本人がまるでこの「胸中山中図」という迷宮(ダンジ
ョン)、現代ではコロナ禍の限られた世界を冒険するかのような新た
な作品へと結実していく。ギャラリー空間の壁面に浮かぶ66点から成
る作品は、前述の図を彷彿とさせる心臓から、現代の俗世で目にする
自転車や栄養飲料缶まで様々なモチーフが並ぶ。コロナ禍は行動を制
限された人々に、各人が日常で大切な物とは一体何なのかを問い直す
機会となった。吉澤はこれまでの大きな絵を自らの手で解放し、この
コロナ禍という迷宮の中へと飛び込んだ。カードゲームの如く66もの
アイテムを持った作家は、それを持ち続けるのではなく、出会った観
客の手へと贈っている。この展覧会が終了し、ゲームの各アイテムが
世界の多くの人の手に渡るのを見届ける頃、吉澤の次の冒険が始まる
だろう。新しいアトラスを携えた作家はアメリカへと大きく飛び立つ。



Artist Profile
1987 千葉県松戸市生まれ
2008 女子美術大学短期大学部造形学科絵画専攻 卒業
2008 多摩美術大学美術学部絵画学科日本画専攻 三年次編入
2012 多摩美術大学大学院美術研究科 博士前期課程 絵画専攻 日本画研究領域 修了
個展
2012 アートスペース羅針盤、東京
2013 藤屋画廊、東京
2015 「フィラメントパーツ」 FABulous、東京
2016 「日々のうた」SPACE M、東京
2017 「Numb」アートスペース羅針盤、東京
「群雲marakumo"」画廊くにまつ青山、東京
2018 「VIA」燿画廊、東京
「Dear Puzzle」CLOUDS、東京
2019 「今日と明日」木ノ庄企画、東京
2020 ギャラリーQ、東京
2022 ギャラリーQ、東京
グループ展
2009 「雪梁舎美術館フィレンツェ賞展」雪梁舎美術館、新潟 横浜赤レンガ倉庫、神奈川
「多摩美術大学日本画科卒業制作展」東京銀座画廊、東京
「五美術大学卒業制作展」国立新美術館、東京
2011 「廻展」藤屋画廊、東京
2012 「渺渺展」東京銀座画廊、東京 以降毎年参加
「6femmes2」/アートスペース羅針盤、東京
2013 「美it展」文京区役所、東京
2014 「あく・がる[憧る]展」千代田アーツ3331・アキバタマビ21、東京
「風の会展」雪梁舎美術館、新潟
「未来展」日動画廊、東京
「女流画家展vol.2」アートスペース羅針盤、東京
2015 杉澤友佳、吉澤舞子二人展「イワクイイガタシ」ゆう画廊、東京
「女流画家展vol.2」アートスペース羅針盤、東京
2016 「RAZZLE DAZZLE」A.I.R GALLERY、ニューヨーク
「SAKURA Group」MDPギャラリー、東京
「METAreal」神奈川県民ホールギャラリー、神奈川
「東京企業コラボプロジェクト、ブルームーンビールコラボ」MDPギャラリー、東京
「合同展」MDPギャラリー、東京
2017 「渺渺展小作品展」ギャラリー和田、東京
「たまらなく可愛いアート展」伊勢丹新宿店、東京
「第14回三井不動産商業マネジメント・オフィース・エクスビション」
三井不動産商業マネジメント、東京
2019 「第8回 Artist Group -風- 大作公募展」東京都美術館、東京
「Shin-Nihonga 展」ギャラリーQ、東京
受賞歴
2009 雪梁舎美術館フィレンツェ大賞展ビアンキ賞 受賞
2013 第13回福知山市佐藤太清賞公募美術展 入選
2014 第1回Terrada Art Award 入選
2015 ART AWARD NEXTV 入選
2017 第7回トリエンナーレ豊橋・星野眞吾賞展 入選
イベント
2015 パフォーマンスイベント「曇天の渦」英会話カフェ FABulous、東京
2016 パフォーマンスイベント「サファイアの角」神奈川県民ホールギャラリー、神奈川
「我孫子国際野外美術展」布佐市民の森 竹林、千葉